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空のいろ

本、映画、TVドラマの感想や、日々思ったことなどを書いてます

アガサ・クリスティ著「牧師館の殺人」。ミス・マープルは想像以上に好奇心旺盛だった

2017.5.15.
深冬です。
ミス・マープルの最初の長編「牧師館の殺人」を再読しました。

びっくりするくらい、ミス・マープル本人のことを忘れていました。
トーリーは牧師さんの一人称で進むし、犯人が印象的だったので、そこしか覚えてなかったのです。
トリックはもちろんきれいさっぱり忘れていましたから、ある意味、ミス・マープルと同じ状況です。

犯人の見当はついているけど、犯行方法がわからない。もしかすると自分の思い違いで、犯人は別の人物なのかも・・・。

でも、ミス・マープルは探偵をするけど、私はしません。
読みながら、なんだか引っかかるなぁと思った部分が、解決に結びついていく布石だったというのを楽しむだけで十分満足。

あらすじを少し。


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牧師館の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

牧師館の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)



この物語は、ミス・マープルが住むセント・メアリー・ミードの、牧師さんの一人称で語られます。
牧師さんは、十六才の甥と、二十歳ほど年下の奥さん、無愛想で腕の悪いメイドと暮らしています。
牧師館には、離れがあって、そこを若い画家にアトリエとして貸していますが、画家は住む家はほかに借りています。
牧師に近しい人として、牧師補がいます。彼は気の弱いタイプ。少し離れた所に下宿しています。

話は、牧師館で家族だけの昼食の席で、ストーリーの進行役となる牧師さんが、聖職者らしくないことを言ってしまうところから始まります。

そう言わせてしまった面倒くさい人が、プロズロー大佐。自分の信じる正義によって、多少過激なことを言い、かつ行動する人です。耳が遠いので、いつも大声で話すため、村中に話は筒抜けになってしまうのも、頭が痛いところ。
プロズロー大佐には、娘と再婚した妻がいます。娘はとらえどころのない行動をとるので村の人に変わり者と思われ、妻の方は、夫がああいう問題の多い人なので、同情されてがちです。
特に、村の医者は、人道主義者で、この時代なのに、十代の自殺について現代の考え方に近い意見を持っています。
画家は、大佐の娘と牧師の妻をモデルにしていましたが、大佐の娘の方は、水着姿だったことがわかり、画家は大佐の家に出入り禁止になってしまっています。
このプロズロー大佐敷地内、古墳が見つかっていて、考古学者とその秘書が出入りをしています。

そして、ミス・マープル。彼女が住む家は、牧師館の隣!

牧師さんの昼食での暴言事件から少し経った頃、彼は、画家とプロズロー大佐の妻から不倫をしていることを知ります。相談されても、牧師として言えることはただ一つ。結局ふたりは、大佐にばれる前に別れを選んだので、ひと安心。
そんな時、牧師館で、プロズロー大佐が殺されます。
そして画家が自首したのです。でもそれは、不倫相手である大佐の妻が、夫を殺したと勘違いして身代わりになろうとしたため。大佐の妻も、同じ理由で自分がやったと告白します。
結局、ミス・マープルの証言で二人ともアリバイが成立。
少なくとも七人は容疑者がいるというミス・マープル
牧師さんは、医者や警部たちと一緒に、事件の参考人たちの聞き込みに同行していきます。
それぞれに淑女らしく振舞おうとするオールド・ミスたちや、日に日に様子がおかしくなる牧師補、あやふやな証言をするメイドや若者。
いつも冷静なミス・マープルが、甥が来ると大興奮したり。
その甥の言葉から、考古学者は偽物だと知らされ詐欺師だとわかったり。
最近引っ越してきて村では何者かよくわからないとうわさされていた女性が、大佐の元妻だったとわかったり。
牧師補が自殺騒ぎを起し、彼が大佐を殺した犯人だとわかってしまうにいたり、とうとうミス・マープルは、真実にたどり着きます。
けれど、証拠がありません。
そこで、罠をひとつ。犯人はそれにはまって逮捕となりました。
犯人は、「それを一番しそうな人物」。不倫をしていた大佐の妻と画家の複数犯だったのです。
登場人物は他にもいますし、それぞれが個性的。人の好い牧師さんは東奔西走、振り回されます。
ミス・マープルを冷静に評価する一方で、おだてに簡単に乗ってしまうところが、微笑ましいというか、笑えます。
適当に答えていたのかと思っていたミス・マープルの「七人の容疑者」が、実際にこの人たちだと語られたのには、少しびっくりしました。

各登場人物に注意して、もう一度読んでも面白いかもと思いました。





再読の感想ですが。

この記事の書き出しにも言っていますが、ミス・マープルというキャラクターに驚きました。
勝手に、完璧な老夫人を自分の中でイメージしていたのです。ドラマの影響かもしれません。

ミス・マープルの情報源は、道行く人の様子や、出入りのお店の人たちや、メイドさん。お茶会のおしゃべりや、婦人会や教会の集まりとかだと思ってました。
それも間違いないのですが、もっとアクティブでした。


自分から押しかけていくこともある。しかも、忍び寄るようにいつの間にかそこにいる、という感じなのです。一体いつからいたのって言いたくなります。


自分の庭は、外から自分の姿は見えないけれど、内側からは道行く人をすべて見られるように作られています。自分が話したいと思った人だけに声がかけられるわけです。


気になる人物がどこへ行くのか望遠鏡で見たのを、白々しくバード・ウォッチングをしていたと言ってのけてしまいます。


これは、評判悪くても仕方ないです。

だから、そんな彼女が動揺する姿は、少し新鮮でした。
でも、ミス・マープルのいうことは結局いつも正しい。
ミス・マープルは、地道に考え、あらゆることを検討し、答えに到達している。
そういう人でした。


人間性について考えるのが趣味、というのがこんなに悪趣味だと思ったことは初めてです。


そして今回、ふと、以前働いていた部署にいたおじさまを思い出しました。
彼は、その職場にくるまで、広告業界にいた人でした。
その人が言ったのです。


「情報っていうものは、いつ誰から来るからわからない。

だから、すでに知っている事でも、『あぁ、それはもう知ってる』と答えては駄目だ。
『そうなのか。教えてもらえて助かったよ』と言うんだよ。
そうでなければ相手は、こいつは自分のことを必要としていないと思って、情報を二度とくれなくなるか、後回しにされる。

今回は、自分にとって一番ではなかったとしても、次の情報の時は一番の人かもしれない。

だから、なんでも知ってるなんて顔をしちゃいけない。
教えてやろうと思ってくれてる人の顔をつぶしちゃいけない。
情報源は、大事にしろよ。」

これはビジネスの話でしたが。


三人のオールド・ミスが同じ話をすると思っていたら、全員違っていたというくだりがあります。
無限に続くお喋りに付き合う必要は全くないと思いますが、予断は禁物。
今回の語り手は、人の好い牧師さんだったので、誰の話も忍耐強く聞いていましたが、誰にでもできるかといえば、難しいかもです。
今回の担当警部さんのように。


ミス・マープルは、やり過ぎかもしれませんが、「それはもう知ってる」とか「もう聞いた」とか言わずに、必要なことだけ聞いて、ループするおしゃべりを断ち切る技を身につけたいです。
 
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