空のいろ

本、映画、TVドラマの感想や、日々思ったことなどを書いてます

アガサ・クリスティ著「パディントン発4時50分」で気になるのは、ルーシーの恋のゆくえ

2017.06.08
深冬です。

電車が並走して、向こう電車の人の顔まではっきり見えるってこと、実際にありますよね。
私は、誰か知ってる人が向こうにいたら面白いのにと、車窓の顔をよく見るのですが、まだそういう楽しいことには行き合っていません。

パディントン発4時50分」は、楽しいどころか、並行して走る電車の中での殺人を目撃してしまうところから始まります。

昔読んだ時は、二十歳前後だったと思います。
ミス・マープルより、彼女に協力するルーシー・アイレスバロウがカッコイイと思ってました。実はそれで、ミス・マープルはよく覚えていなかったのですが・・。

再読しても、ルーシー・アイレスバロウはカッコイイ。
そして今回は、ミス・マープルへの印象が強く残りました。
やっぱりミス・マープルは怖いくらい強い人です。
 
 
■アマゾン
パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
   
楽天

 
 
あらすじを少し。
 

クリスマス前、ミス・マープルの友人エルスペスが、並走していた電車の中の殺人を目撃する。けれど、被害者は見つからず、駅では相手にされず、警察でも一通り調べたら終わりにされた。
ミス・マープルは、エルスペスに義務は果たしたからと言って休暇に送りだしてから、活動開始。
冷静に自分にできることを考え、助けてくれそうな人を見つけ出し、実行に移す。
地図好きの牧師館の息子には地図を借りた。鉄道会社に勤める甥に、電車の発車時刻のことを聞き、甥から、ジェーンおばさんがまたなにか始めたのと楽しそうな返事とともに情報をもらう。
そうしてミス・マープルは、自分で割り出した遺体がありそうな場所をクラッケンソープ家の敷地内と推理。
遺体を見つけるために、選び出した最適な人が、ミス・ルーシー・アイレスバロウ。彼女はオックスフォードで数学を学び首席で卒業した家事のスペシャリストだ。休暇中だったルーシーは、今回一番危険な「遺体を捜す」という依頼内容を聞くと、それを引き受け、家政婦としてクラッケンソープ家に入った。
そしてルーシーは、ミス・マープルの期待通り、遺体を見つける。エルスペスが見た被害者だった。
けれど誰かがわからない。
被害者は、長男が戦死する前に結婚したらしい妻ではないかという疑いが出てくる。
ルーシーの、ミス・マープルからの依頼はここで終わりだったが、彼女はクラッケンソープ邸に残る。
前当主が残した遺言のせいで、財産が自由に使えないクラッケンソープ家の人々。ルーシーに対し、既婚の男性は仕事の勧誘をし、未婚者は、おじいちゃんな当主にいたるまで彼女を口説く。
そんな中、第二、第三の殺人事件発生。クレッケンソープ家の四男と三男が毒殺されてしまった。
その一方で進展もあった。被害者が長男の妻ではなかったとわかったのだ。
ミス・マープルは、推理を確かにしたものの証拠がない。そこで賭けに出る。
エルスペスにあの電車であったのと同じシチュエーションの場面を見せたのだ。エルスペスの反応で、ミス・マープルが巧に犯人を追いつめ、自白させる。
一件落着。
ただ、ルーシーの恋の行方は分からない。彼女が関心を寄せていたとわかるのは、クラッケンソープ家のふたり。画家のセドリックと、亡くなった次女の婿で元戦闘機パイロットのブライアン。
例によって、ミス・マープルだけが知ってるのだけど、はっきりとは示されずに物語は終わる。
 
 
感想は・・。
  
  

 
 
『牧師館の殺人』のラストで牧師夫人の妊娠が分かってますから、その息子が青年になっているということは、ミス・マープルもかなりのお歳になっているはず。本人もその自覚がありますが、体の衰えと頭の中は別。行動力は相変わらずだし、見かけとは違う冷徹ともいえる発想もそのまま。
かわいいおばあちゃまぶりも健在。これは地だと信じたいです。
演技力と度胸も相当なもの。ただの年の功では、こうはいきません。
捜査責任者のクラドック警部が、「ジェーンおばさんに言ってやるぞって気分」になるのもわかります。頼りがいありますよね。

犯人が無事に捕まってめでたしめでたしなのですが。

ルーシーってば、どっちの男性を選んだの? という気持ちが、もやっと膨らむエンディングです。
何か決定的な場面はなかったかともう一回斜め読み。
どうやらキーワードは「豚小屋」みたい。ロマンチックじゃない。

そして気づきました。クラドック警部、彼は金髪のハンサムさんだと描かれている。主要な男性の登場人物の中で、唯一ルーシーを口説かなかった人。このことが、ルーシーの印象に残っていないでしょうか。
いないか・・・。


この物語も映像化されたものがいくつかあって、ルーシーの恋のエンディングは色々あったと記憶しています。

こういうあいまいさが、二次創作を豊かにしてくれるのでしょう。


私が押すのは、スコットランドヤードのクラドック警部です。
ルーシーの能力を家事に限定することなく評価していた人ですから。
ルーシーになら、クラドック警部もミス・マープルにしていたように愚痴を言えるだろうと思うのです。
ルーシーの方も、クラドック警部になら、いろいろ警戒せずに話せるのではと思うのですが。


「教えて、ミスマープル」って言いたくなります。
 

■その他の推理小説関連 
アガサ・クリスティ著「牧師館の殺人」。ミス・マープルは想像以上に好奇心旺盛だった - 空のいろ
 
本が苦手な人の味方は短編。アガサ・クリスティーの「火曜クラブ」はミス・マープルの短編集です。 - 空のいろ
 
「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティ著。 「兵隊人形」という言葉の行方 - 空のいろ
 
私が読んだ初めての「宮部みゆき」は、「龍は眠る」。主人公と一緒に翻弄されました - 空のいろ

ドラマ「リバース」、原作未読。今読むべきか、読まざるべきか・・・ - 空のいろ